短編ではなくシリーズ物を読みたい人にお薦めしたいのが、メインの人物に焦点をあて、その繋がりや背景を通して人間の成長を読む事ができる歴史小説、北方謙三「水滸伝」シリーズです。
大水滸伝
「水滸伝」・「楊令伝」・「岳飛伝」で三部作完結となりましたが、それに続く新たな物語として、「チンギス紀」が刊行されています。
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水滸伝 2000年ー2005年 全19巻
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楊令伝 2007年ー2010年 全15巻
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岳飛伝 2012年ー2016年 全17巻 シリーズ三部作
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チンギス記 2018年~ 10巻 シリーズ三部作からの続き
水滸伝 全19巻
12世紀初頭、中国。腐敗混濁の世を糺すために、豪傑・好漢が「替天行道」の旗のもと、梁山泊に集結する。下級役人の宋江、塾の教師・呉用。禁軍の槍術師範だった林冲。官軍を離脱した秦明、花栄、楊志。出奔し放浪中の僧侶・魯智深。虎と素手で闘った怪力・武松…。一方、宋は最強の軍人・童貫が禁軍を立て直し、迎え撃つ。影で怪しく動く青蓮寺…。志か、権力への執着か。男たちの熱く、終わりなき戦い!
12世紀初頭の北宋末期の中国で政治が腐敗し、「宋江]、「晁蓋」が立ち上がり、仲間を集め梁山泊を結成し、宋に立ち向かっていくという内容です。
「水滸伝」だけで19巻、「楊令伝」15巻、「岳飛伝」17巻、シリーズで51巻もあるので、登場人物も100人を超えます。
最初は登場人物の名前が次々に出てきて、誰が何をしているのかわからなくなると思います。
本の最初に登場人物一覧が載っているので、新しい名前が出てきたらそのページを見て確認するという作業を繰り返していくうちに、名前と行動が理解できると思います。
宋を倒すにはどうすればいいのか?
出会った漢が信頼できる人間であれば仲間に誘い、活動資金を調達し、政府にばれないよう地下に潜りながら組織を広げていく。
宋を倒すため戦いの中で次々に漢が現れ死んでいくのですが、その一人一人のキャラクターがしっかり描かれているので感情移入してしまい、最後を迎える度に泣いてしまいます。
宋を倒そうとする梁山泊、その宋を守る軍人、それぞれに正義があり信念の元で衝突する中で、腐った国を守る葛藤、梁山泊に対しての感情、尊敬など、様々な思いが複雑に絡み合いながら物語が進んでいきます。
しかしながら、巨大な宋に立ち向かいますが、結果宋を倒す事ができず、梁山泊は壊滅。時代は流れ、死んだ英雄の子供たちに思いが受け継がれていきます。
楊令伝 全15巻
梁山泊の炎上・陥落から三年。心身に深手を負いながら生き残った同志たち。彼らはあの男の戦線復帰を待っていた。楊志の遺児にして、陥落寸前の梁山泊で宋江から旗と志を託され、北へ向かったという楊令…。一方、傭兵集団を率いる岳飛を従者に加えた童貫は叛乱軍を蹂躙、岳飛は武将として急成長する。楊令が新頭領となった梁山泊でも、二世たちが成長していた。宋や金国と対峙し、地勢図が次つぎと塗り替えられていく──。
宋江、晁蓋、梁山泊の思いを受け継いたのが「楊令」です。
「楊令伝」では水滸伝で死んでいった漢の子供達世代が思いを受け継ぎ、活動を行います。
水滸伝時代の生き残った英雄とともに、宋・官軍を撃破していき、ついに「童貫」を倒すことができますが、「楊令」も非業の死を遂げてしまいます。
戦いの中で負ける事がなかった、最強の漢「楊令」がどのようにして死んでいくのかも見所の一つですが、ここまでで34巻読み続けているので、「楊令」の死を受け入れるのには時間がかかりました。
北宋は壊滅し、宰相の「秦檜」により南宋が建国され、更に北の方では「兀朮」 の下で南への版図拡大を図る金との闘いも始まり2つの国と対峙します。
「楊令」の遺志を継いだ下の世代が敵であった「童貫」の元で育てられた「岳飛」と手を組み、南宋の「秦檜」を倒し、新たな国を作っていく物語が「岳飛伝」で描かれています。
岳飛伝 全17巻
岳飛の剣を吹き飛ばした若い男は、「子供か」と言った。これが楊令との屈辱的な出会いだった――南宋の宰相・秦檜の元で軍閥になった岳飛。金国との戦い方をめぐって、秦檜と対立を深め、絶体絶命の危機に陥るが、ある者たちが動き……。一方、梁山泊を離れ、南方に新天地「小梁山」を切り拓いた者たちは、甘蔗を栽培し、生活を営み始める。老いてなお強烈な個性を発揮する旧世代と力強く時代を創る新世代。いくつもの人生が交錯するシリーズ最終章。
岳飛伝では、梁山泊対国という物語ではなくなってきています。
梁山泊は小さな国から、形の無い概念へと徐々に変化していき、秦容は南に小梁山を作ります。
梁山泊、小梁山、金国、南宋、と複雑に絡み合いつつ、水滸伝で死んでいった男の息子達が中心となり戦いを続けます。
生き残った英雄である、呉用、李俊、燕青も死んでいきますが、楊令の息子である「胡土児」は「吹毛剣」を託され、金国を離れ、北へ移ります。
「水滸伝」三部作で完結だと思っていた所、「チンギス記」がスタート。
チンギス記 最終巻 17巻 2023年7月発売
時は十二世紀ーー。
モンゴル高原では、様々な部族、氏族が覇権を競い合っていた。 モンゴル族の有力氏族キャト氏の長の嫡男として生まれたテムジン(のちのチンギス・カン)。父がタタル族に討たれ、後継となるはずが、十三歳のとき、ある理由から異母弟を討つことに。 対立するタイチウト氏に追われることとなったテムジンは一人砂漠を越えて南へと向かう。放浪中に人と出会い、経験を積んだテムジンは再び故郷へ戻り、十五歳にしてキャト氏の長となる。タイチウト氏との苛烈な戦い、ジャンダラン氏の長・ジャムカとの運命的な出会い……。
テムジンはまずモンゴル族統一のため、旗を掲げ、仲間と共に原野を駈ける!
大水滸伝シリーズでは中国・東南アジアでの戦いが描かれていますが、チンギス紀はその北、モンゴルが舞台となります。
日本にも攻めてきた「チンギスハーン」の物語です。
水滸伝は3部作で完結、チンギス記との何かつながりがあるのか?どうにかつながっていて欲しいと思っていた所、「胡土児」と「吹毛剣」が再登場します。
テムジンの元に届けられる「吹毛剣」と「胡土児」との闘い。
水滸伝3部作を読んでからチンギス記を読み始めると、面白さが数倍増すと思います。
水滸伝シリーズ51巻は3回、チンギス記は2回読みました。
特に水滸伝シリーズは物語が複雑で51巻という長さがある為、3回読んでみても読み始めると新鮮な気持ちで読む事ができます。
- 司馬遼太郎
- 項羽と劉邦
- ワンピース
- キングダム
上記が好きな方は、必ずハマると思います。
北方謙三 大水滸伝シリーズ+チンギス記 オススメです。